waiting_time_risk
診療所の待ち時間がなぜできるかは、「なぜ待ち時間ができるのか」で述べましたが、待ち時間ができるのは、患者が多い証拠で、待ってでも受診したい患者がいるというのはありがたいことで、診療所が評価され、発展の強みの礎(要素)となるものです。
では、なぜ待ち時間がリスクとなるのでしょう。
確かに、待ち時間があっても患者が増えるということは、診療所が評価されているということで、喜ばしいことなのです。従って、待ち時間対策としては、今後も評価を向上させつつ、いつまでも今まで通り来てもらえるように対応していかなくてはならないのです。
しかし、待ち時間があっても来院してくれることに鈍感になってしまい、待ち時間が常態化していくと、患者から見ていつまで我慢できるでしょうか。
患者からみれば、いくらいい先生や診療所でも、待ち時間が長ければ、できればなるべく行きたくないと考えるようになるのではないでしょうか。患者は現在までの症状をよく知る診療所から他の診療所にはなかなか移るようなことはないのですが、患者が常にそのような意識を持ち続けているということが大きなリスクになるのです。それが、他にいい診療所を耳にし、そちらに移ることになると大きなリスクとなって現れます。
そのリスクについては、「診療所のシェアは何で決まるか」をご参照ください。
また、待ち時間は患者が別の診療所に移るリスクだけでなく、先生やスタッフにも過剰な負担をかけるリスクがでてくるのです。
それらのリスクを整理しておきましょう。以下をご参照ください。
診療所のリスクの詳細については「ストーリーで語るリスク
マネジメント論(リスクマネジメント事例集)」第4章・
第5章をご参照ください。
診療所では、待ち時間が長くなると様々なリスクを招きます。
それを図示すると次の通りです。
【待ち時間の増大がもたらすリスク】
出所)筆者作成
注)四角は、待ち時間で発生するハザードとなる事象
楕円形は、発生するリスクまたはリスクとなるハザード
上記の図の通り、待ち時間の悪化や対応を間違えると、様々なリスクの発生の可能性を高めることになります。中でも、患者満足度が低下し、患者のリピート率の悪化と新規患者の減少の悪循環になるきっかけにつながれば大変なことです。このリピート率の悪化は、競合する診療所に患者を奪われ、診療所のシェアは低下し、経営に大きな悪影響を与えることになります。
リピート率低下の影響は下「診療所のシェアは何で決まるか」を参照ください。
また、待ち時間の悪影響のリスクを具体的なシーンで図示すると次のようになります。
待ち時間の悪化は様々なリスクの連鎖を招きます。
【待ち時間悪影響の連鎖の概要】
患者が増え待ち時間が増えると、必ず待合室を広くしたり、駐車場を増やしたりすることを検討します。そして、待合室を広くしたり、駐車台数を増やしたりすることは、患者さんに配慮した前向きな投資で、資金も調達しやすいことからそのスペースがあれば安易に行いがちです。
しかし、それは、【待ち行列ができる7要因】の「受け入れ患者数を増やす」要因となります。確かに、待合室や駐車場が広くなり、一時的に患者の居心地が多少良くなったとしても、また混雑してきて待ち時間がより長くなる悪循環になることを理解しておく必要があります。
従って、そのための待ち時間対策を考えておかなくては、患者満足度を下げる大きなリスクになるのです。
では、どのような対策が効果的なのでしょうか。
それについては、「なぜ待ち時間ができるのか」の「正しい待ち時間対策とは?」をご参照ください。
なお、これらの内容をまとめている「ストーリーで語るリスクマネジメント論(リスクマネジメント事例集)」第4章・第5章もご参照ください。
【参考になる関連情報】
何故待ち時間ができるのか、待つ行列理論に基づいた待ち時間のできる理由や正しい待ち時間の対策を述べています。「なぜ待ち時間ができるのか」をご参照ください。
何故、待ち時間対策を行い待ち時間を改善し、患者満足度の向上・リピート率の向上が必要なのでしょうか。「診療所のシェアは何で決まるのか」をご参照ください。
予約の重要性は、上記「なぜ待ち時間ができるのか」の通り予約システムの導入が最も効果的です。しかし、予約システムのメリットはそれだけではありません、「予約管理が必要な理由」をご参照ください。
待ち時間を改善するためには、予約をうまく活用することだけでなく、継続的に現状を正確に把握し、正しい対策や改善策を検討するPDCAサイクルの構築が不可欠です。その必要性については、下記「待ち時間の把握と分析」をご参照ください。
ORの「待ち行列理論」による待ち行列対策(待ち時間対策)は上記「なぜ待ち時間ができるのか」の通りです。では、予約を導入すれば待ち時間は改善されるのでしょうか。その改善方法について説明を加えています。「待ち時間の改善方法」に記載しています。下記をご参照ください。
待ち時間の「改善事例」は下記をご参照ください。予約患者が思った以上に早く来ていることが分かります。診察までの待ち時間以上に在院時間を把握し、対応することが重要なことが分かります。
近年、予約システムは多くありますが、活用方法を間違うと待ち時間が長くなるだけです。また、予約管理だけの機能では不十分です。患者の院内の実態を把握しなければ、待ち時間がどのように改善されたかは把握できず、改善を継続するPDCAサイクルの構築はできません。「診療予約・患者動静管理システム」をご参照ください。